この問題に関しては、色々な意見や考えが示されてきました。ここでは、そんな俗説や誤解を払拭し、今後のベッドリネンの購入の際に参考になるように、お答えしたいと思います。
まず、スレッドカウントとは、あらゆる布において1インチ(=2.54cm)四方あたりに使われる糸の合計数として表されます。つまり、例えば200スレッドカウントの布であって、1インチx1インチに切り取ったとすれば、その布は計200本の縦糸と横糸でできているということなのです。
ベッドリネンに限って言えば、そのスレッドカウントには大体120から1,000を超えるまでの幅があります。120スレッドカウントの構造は、縦糸・横糸それぞれ60本ずつの計120本。またスタンダードな200スレッドカウントであれば、118本の縦糸に91本の横糸で織り上げられることが一般的です(この場合、厳密には199スレッドカウントですが、10の位に切り上げて表されるのが通常となっています)。
また、スレッドカウントを正しく評価するためには、紡ぎ糸のサイズ、「デニール」との関係を理解することも重要です。この点は、綿、ウール、ポリエステルや、ナイロンであっても同じことです。
デニールとは、布が紡がれる糸の厚みに関連した値のことで、その数値が高ければ高いほど細い糸となります。例えば120スレッドカウントのベッドリネンに使われる綿糸は30デニールのものですが、この同じ綿糸を使って200スレッドの布を織り上げるのであれば綿糸をもっと密に詰めなければいけません。それでは、スレッドカウントが増す程、布は硬くなってしまう一方ですし、糸の数にも限りがあります。30デニールの糸であれば、250スレッドカウントがその限界、というように。スレッドカウントが大きくなればなるほど、単位面積あたりに詰め込まれて織られる糸の密度は上がっていくのです。
ところで、ベッドリネンをつくるにあたっては、スレッドカウントが上がるにつれて、紡ぎ糸のサイズは小さくなっていきます(つまり、デニールの値は大きくなります)。例えば、200スレッドカウントのベッドリネンに使用されるのは40デニール、300スレッドカウントでは60デニール、400スレッドカウントでは80デニールというように。一般的に使用されるもので最も大きなデニールの値は140となり、これはとても上質なコットン、あるいは絹織物など、高価な製品に使用されます。
ただし、このルールが当てはまるのは、上質な紡ぎ糸を使用した場合だけです。現実には残念ながら、かなりの数のベッドリネンは低品質な紡ぎ糸を使用して製造されています。そして質の低い細い綿糸は織り上げる際に切れてしまうことも多く、それを防ぐために数本の紡ぎ糸を撚り合わせ、強度の高い太い糸にした上で、この糸を使用し様々なスレッドカウントの布製品へと織り上げるということが行われているのです。
このような撚り合わせた糸(双糸とも呼ばれます)で布を織り上げた場合の問題は、スレッドカウントが正確に説明されないということです。例えば、このような双糸で200スレッドカウントの布を織り上げた場合、それはそのスレッドカウントはあくまでも200のはずですが、実際にはかなりの製品が400スレッドカウントとして売られているのです。これは、極端に高い数値のスレッドカウントの布を作るためのトリックでもあるのです。1,000スレッドカウントの場合を考えてみましょう。この場合に必要とされるのは極細の100、あるいは120デニールの紡ぎ糸で、560本の縦糸・438本の横糸で織り上げられることが一般的です。でも、80デニールの紡ぎ糸を撚り合わせた双糸を縦糸233本・横糸264本で織り上げたとして、実際には500スレッドカウントであるにもかかわらず、その低品質であるがゆえに撚り合わせて使われる双糸を2本とカウントすれば、それは1000スレッドカウントとも表されてしまうのです。もちろん、それを定めた法律がある訳でもなく、したがってこれは違法ではないとはいうものの、誠実とは言えません…。
双糸を使用することにはまた別の問題点もあります。それは糸そのものが厚みをもつために、高スレッドカウントの製品を織り上げるとなると小さな範囲にそれらが無理に詰め込まれることによって、密度が上がり過ぎてしまうことです。そのように作られたベッドリネンの肌触りは、カーテン布やキャンバスのように荒いものとなってしまいます。また肌触りだけでなく、布そのものが呼吸できなくなってしまうということもあり、これはベッドリネンの性質上大きな問題です。通気性が悪いというのは、余分な熱がこもるということを意味するためです。
機織りのプロセスは、ベッドリネン製造のはじまりに過ぎませんが、すでに潜在的な問題はあるのです。次の段階は仕上げ処理ですが、このプロセスもとても重要です。なぜならこの処理を適切に施すことによって、「白さ」が決まり、「縮み」を最小限に押さえ、なめらかな「手触り」の布地となるからです。
以上のことを理解すれば、ベストのスレッドカウントが何かという問いに対する明確な回答はないということがお分かりいただけるのではと思います。品質を見極める上で大切なのは、その布地が織り上げられ、仕上げられるプロセスを総合的に判断すること。その上で、ご利用いただく状況やお好みによって、それぞれにベストなスレッドカウントを見つけていただければと思います。